原作:泉鏡花 『貧民倶楽部』『黒百合』『照葉狂言』
演出:蜷川幸雄
脚本:堀井康明
装置:朝倉 攝
照明:吉井澄雄
音楽:宇崎竜童
作詞:阿木耀子
効果:本間 明
衣装:川原 彰
振付:花柳錦之輔
殺陣:國井正廣
アクセサリーデザイン:大山貴生
千破矢瀧太郎役で主演
共演者:
お丹:浅丘ルリ子
彌陀平:山谷初男
在原貞子:神保共子
深川綾子:二宮さよ子
ご隠居:佐々木すみ江
大木戸伯爵:津嘉山正種
銀六:金田龍之介 他
会場:帝国劇場
(1986年12月3日〜12月28日全26公演
)
(あらすじ)
時は1899年。
病気で母を亡くし、天涯孤独になった、たきを旅芸人の女役者お丹が育てることになる。
五年後、密かに思いを寄せていた、おゆきさんの噂を耳にする。
根性の曲がった成金の元へ嫁ぐ破目になったという。
そこで瀧は、色仕掛けでお丹ねえさんに目を向けさせ、おゆきさんと手を切らせようと仕向けた。
そんな自分に愛想をつかし、瀧はお丹ねえさんの元を去る。
数年後、暴利をむさぼり悪どい商売を重ねる華族と、それに反発する貧民がいた。
その中のリーダー的存在なのがお丹だった。
店先で啖呵を切り立ち去ろうとした時、瀧が現れた。7年ぶりの再会だった。
お丹が言う。「せめて夢を見るなら、誰も見たことのない夢を見るんだ。いつか、大きな船を作って、だれも手の届かない山間の黒い百合を取りにいこう」
瀧は、旅に出ることを決めた。
「今度は火に焼かれようと水に流されようと果たさなければいけない。それがねえさんへの罪滅ぼしだ」
お丹が背を向けている間に瀧は旅に出る。互いに伸ばす手が触れることはなかった。
お丹ら貧民は力を合わせて華族の悪事を見事裁く。
その頃、瀧は地獄の谷とも言われる険しい渓谷にいた。黒百合を探していたのだ。己に試練を与えることで罪の償いをしようと決めたのだ。
しかし、魑魅魍魎にに襲われ満身創痍、しかも渓流の水嵩がどんどん増していく。瀧は死の淵に居た。
そんな時、お丹が現れる。百合は血を吸って黒く染まるのだと…お丹は手首を切ってその血を百合に吸わせる。
ジュリー演じる「
千破矢瀧太郎」
は、同じ鏡花の「黒百合」という本の登場人物です。
ほかに
「照葉狂言」も入っているのでしょうか・・・文学的すぎて、ちょっと理解しがたいお芝居でした。
ジュリーのシーンも原作とはかなり違っているので、何に感動したかって聞かれたら「ただただジュリーの美しさ」
と答えてしまうだろう。舞台演出はみごとでした。
「蜷川幸雄
特集」とかいうTV番組で観たのですが、舞台が終わって大道具を取り壊す映像のバックにジュリーの歌が流れていました。この曲がなんとも物悲しくてとても印象的でした。
なんでも、この舞台のために作られた曲らしいです。
<シャングリラ>(桃源郷)
同じ夢を見た 人の背中は 金の刺しゅう糸 虹の紋章
離れ離れになっても今度は きっと探し出せる
母なるコスモより胸に沁みて 懐かしいあなた
・・・・・・
ともさん感想
前作の「滝の白糸」から11年後の舞台になる。
その間は、ジュリーも忙しすぎたのかしら…もっと舞台に出演しても良かったのに、と思う。
たとえば「ロミオとジュリエット」とか・・・きっと、いくらでもオファーはあったでしょうに・・・。
まず、主演の浅丘ルリ子に圧倒された。
声のハリ、せりふの言い回し・・・すごい女優さんだな〜と再認識した。
お話は、我々一般人にはちょいと難しい・・・^^;
何度も足を運んで観なければ、見えてこない部分もあると思う。
富と名声を手にした人間の強欲・傲慢さ・おぞましさ・・・
貧しいけれど、心が豊かで、夢を持ち続けることができる人々・・・
それだけではない何かをこの舞台で表現したかったのだろうと思う。
きっと、奥が深い。
こういう精神世界を描く作品は嫌いではないけれど、一度や二度観たくらいでは解らない何かがある。
そんな中で我らがジュリーが頑張ってくれた。
あの舞台にはきっとあの髪型が合っていたのかな。
独特のあの異様な世界には、「きめてやる今夜」の頃の髪型では合わないだろうな〜と、そんなことを思いながら観ていた。
ジュリーが手毬とたわむれるシーンが印象的。
手毬になりたい!とまたおバカなことを考えながら観ていた。
ああいうシーンを演じさせたら、天下一品!!
対、人との絡みのシーンよりジュリーの魅力があふれ出てくる感じがする。
オーラがなければ、あんなシーンは無理だな・・・などと偉そうに・・・^^;
蜷川さんの演出は、斬新で素晴らしい。
その中で、一番感動したのは、大きな仕掛けの船でも、舞台いっぱいに咲くお花でもない。
ジュリーの最大の魅力のひとつ、「手」の演技だった。
結べそうで結べない手と手。
浅丘さんの細い指と、それにも増して美しいジュリーの手。
胸がキュン(><)のシーンでした〜。
もう一度、蜷川さん演出の舞台を観てみたいです。